日田玖珠地域産業振興センター

松農園「知識ゼロから始めてここまでこれた!脱サラの星・松上さんの挑戦」

日田市上津江の松農園。
葉わさびやキュウリの栽培だけでなく、
オリジナル調味料の開発にも挑戦しておられる松上さんに、農業にかける想いを伺いました。

農業の知識ゼロ、38才で始めた松農園

もともと僕のおじいちゃんが、上津江で専業農家やってたんです。
僕自身が育ったのは天瀬です。上津江にはお盆と正月に来るくらいで、あんまりご近所と面識もなかったんですよね。
でも、自分が長男ってこともあって、おじいちゃんの「家を頼む」って言葉がずっと心にあったんです。
だから38才のとき、脱サラして上津江に帰るって決めました。
上津江は仕事と言えば林業関係が多くて、僕の弟も林業やりよります。
ただ僕としては、兄弟で一緒に林業やりたくなかった(笑)。
それなら、少ないけど畑はあるし、農機具も揃っとるし、これは一発農家やってみてもいいんじゃないかと思ったんです。

知識ゼロだったからこそ、やる意味がある

僕みたいな、農業の知識ゼロだった人間が農家やることに意味があると思ってて。
今、全国的に超高齢化が進んでるじゃないですか。津江も年々人が減る一方です。
「長男だし地元に帰りたいけど仕事がなくて無理」って人、たくさんいるんじゃないですかね。
そういう人の中から、「松上みたいな奴でもできるんだから、俺もできるかな」って思ってくれる人が、1人でも出てきてくれたらいいな、って。そんな思いですね。

春は葉わさび、夏はキュウリ

うちでは、とにかく旬の物を作るようにしてます。
特に春の葉わさびは、おじいちゃんも作ってたんで思い入れがあって。
実は農家を始めたとき、最初は葉わさび一筋で行こうと思いよったんです。でも、なかなかお金にならんくって。それで津江に合う農産物を徹底的に調べて、キュウリに行きつきました。
津江は夏場でも夜には毛布がいることもあるくらい、寒暖差が激しいんです。そのおかげで歯ごたえのある美味しいキュウリが作れるよ~、って聞いて。作ってみたら本当に「ポキポキポキポキ」いい音が鳴って、あったかい所のキュウリとぜんぜん違ったんですよ。
夏の間は、どっぷりキュウリ作りの毎日です。6~10月は1日2回、朝晩収穫しよります。キュウリのおかげで、サラリーマンと変わらんくらいの収入が入るようになりました。

食べ方を発信しないと、リピーターは増えない

津江の葉わさびは、山の杉を間伐したところに植える「林間わさび」です。
根っこが太い沢わさびと違って、根っこの部分は成長せんから、葉っぱの部分を食べるんです。
ただ、その食べ方が全然知られてないんですよね。
葉わさびは70℃くらいの熱湯にサッと通して、揉んで刺激を与えて、密封して、やっと風味が出てくるんです。
それを知らんで「わさび!珍しい!」って買ってくれても、美味しく食べられんし、リピーターも出てくる訳ないし。
だから食べ方とレシピを付けて売るのが、一番大事なんじゃないかな~、と思って、色々販売促進会にも参加しちょるんです。

辛いもん好きだから作れた「ゆずネロ」と「トロネロ」

今売り出してる商品が、うちで育てたハバネロ(激辛唐辛子)を使った調味料「トロネロ」です。
僕、辛い物がめちゃくちゃ好きなんです。カレーとかラーメンとか50辛で注文するくらい(笑)。
最初は一部の辛いもん好きにウケれば良いと思って、柚子胡椒のハバネロ版「ゆずネロ」を作りました。4年くらい口コミだけで販売したんですけど、やっぱりそんなに注文も来ませんでした。
それで色んな人に説得されて、辛さをおさえて旨味を加えた「トロネロ」も作ったんです。トロっとしたハバネロだから「トロネロ」
ラー油とコチュジャンの中間みたいな、万能調味料と思ってもらえたら。
一番の売りはゴマ油じゃなく米油を使ってるところです。
日本古来の物だし、美容やアンチエイジングに良いって聞いて使ってみたら、辛味が後から来るようになって!
先に旨味、後から辛味。
塩コショウだけで作ったチャーハンに、最後に一滴ポンと垂らすだけで、めちゃくちゃ美味しいチャーハンになるんです。
「ゆずネロ」と違って、お子さんでも楽しんでもらえる味です(笑)

色んな人の助けがあって、今がある

松農園のFacebookにいろいろ考えて投稿すると、それを皆さんシェアして広めてくれるんですよね。本当に嬉しいし、ありがたいです。
葉ワサビのPRを大分県が応援してくれるのも嬉しくて。葉ワサビの法被やレシピのパンフレットも作って貰ったんですよ。
色んな人が手助けしてくれて、今があるなぁ、って思いますね。
そうそう、実は「トロネロ」のパッケージは僕の同級生が作ってくれてるんです。同級生に日田で頑張ってる人、多いんですよ。「同級生で力合わせて何かやろうぜ」って言って本当に実現できる。これも嬉しいですね。

野菜も調味料も旬の物として作りたい

農家って、ただ野菜を作るだけじゃないよな、と思ってて。
自分の畑で作った物を自分で加工する6次産業化も欠かせんし、今の時代はパソコンやスマホも使いこなさな売れんし、展示会に出したかったら書類も書かないかんし。
そういう意味では普通のサラリーマンと変わらんと思ってます。
ただ、やっぱり僕の本流は野菜作りなんですよね。
だから調味料も作るけど、それを通年で安定的に出すのは難しくて。
野菜も調味料も、その時期の旬の物として作っていきたいし、お客さんにもそう思ってもらえたらありがたいです。

未来に向けて、野菜の価値を高めたい

デパートの産直コーナーに野菜を卸すようになって気づいたんですけど、今の消費者は安心安全な物を求めて産直コーナーに来るんですよね。
昔の「余りものを出す産直」とは違ってきてるけど、それが生産者の側にはまだまだ知られてないんです。
産直に限らず、野菜そのものの価値をもっと高めていきたいですね。
もうちょっと若い人で、葉わさび作る人も増やしたいです。
JAおおいたの、わさびの部会に60人くらいいるんですけど、その内50人くらいが70代以上なんです。高齢化もいいところですよ。
45才の僕がルーキー。もっと下の世代がいないと、葉わさびを作るって文化がなくなっちゃうんじゃないかと思って。
僕のやってること見て、「自分もやれそう」って人が出てきてくれたら、嬉しいですね。

〜自然豊かな場所でうまれた旬な野菜と、クセになる辛味調味料〜

奥深い山間で育ったみずみずしい旬の野菜たち、そして松農園さんが開発した「ゆずネロ」と「トロネロ」。両方辛味が強いですが、旨味や香ばしさなどが癖になる美味しさです。辛いもの好きにとっては、何にでもついつい使いたくなる美味しさです。旬のポキっと音のなるキュウリも食べてみたいですね。ぜひ、味わってみて下さい。

連絡先

松農園
大分県 日田市上津江町川原2860        

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