日田玖珠地域産業振興センター

現代のライフスタイルに合う下駄づくりで脚光を浴びる本野はきもの工業

生産から販売まで自社工房で行っているのが「本野はきもの工業」です。もっとたくさんの人に下駄を履いてもらいたいと、さまざまな活動や工夫を行っている3代目の本野雅幸さんに、こだわりや日田下駄への思いを伺いました。

お客さまの予想の上を行く良い下駄を目指して

創業は昭和23年です。初代は祖父で、もともと佐賀にいたんですが、日田の下駄屋で修行した後に独立し、今に至ります。
私は3代目で、2代目の父と母、妻とで家族4人でやっています。下駄ができあがるまでにはいろいろな作業工程があるので、家の中で分業制になっている感じですね。父が削って、ぼくが塗りを、母が裏のゴムを貼り、嫁が鼻緒を作るという具合に、一家で分担して作業しています。
ぼくが下駄づくりを始めて12〜13年たちました。技術の習得はもちろんですが、作業工程も多いので、自分のやりやすい方法を見つけるまでが難しかったですね。
日々下駄づくりをしていく中で、お客さまに手に取ってもらった時に、予想していたよりも良い!と思っていただけるものを目指して作っています。

オリジナリティあふれるおしゃれな下駄

うちはいろんな方とコラボさせてもらっているのが特徴だと思います。
ネイリストの方や、クラフト作家の方など、さまざまな作家さんとコラボしています。機械では絶対にできない、人の手でしかできない下駄もあって、細部にまでこだわった下駄づくりを目指しています。うちでしかできない、オリジナルの下駄づくりにこだわっていますね。
その中でも今のオススメは、杉材とアクリル樹脂で作った「くりあげた」です。
その名の通りクリアな部分が入っています。スリット状に並べたアクリル板が光を通すという今までになかった下駄です。カラーは5色あり、アクリル部分の色も鼻緒に合わせた色になっています。杉の温かみと柔らかさの間にふわっと光が入り込み、いつもと違った下駄を楽しんでいただけると思います。

日田下駄をもっと知ってもらいたい

以前はオーソドックスな昔ながらの下駄ばかりでした。それでも売れていたのであえて工夫する必要がなかったんですが、今はライフスタイルが変化して、下駄を履く人が少なくなりました。そういう時代に若い人にも興味を持ってもらえるように、履き心地もですが、見た目にもこだわって下駄づくりをしています。
それも、もう一度「日田下駄」というものを全国に知ってもらいたいからなんです。
今日田で下駄を作っている業者は全部で9つあります。最盛期には286の工房があったそうですが、それをピークにずっと減り続けているんですよ。
それでも下駄職人の数は日本一多いんじゃないでしょうか。静岡と広島も下駄で有名ですが、販売はしてはいるものの、一から作っている職人は少ないと思います。
今では日田が下駄の産地だと知らない人も多くなってきました。特に地元の人には「日田下駄」という、ここで育った日田杉からできた下駄があるんだということを知ってもらいたいと思っています。

意外に知らない下駄の履き方

最近はネットでの注文も増えました。でも、直接手に取っていただくのがいちばんです。
足の大きさは人それぞれ違いますし、同じ人の足でも左右で大きさが若干違うものですから、実際に履いていただいて調整することが大切なんです。
昔は日常的な履物だったこともあり、下駄屋や履物屋も多く、すぐに調整してくれる場所が沢山あったそうですが、時代とともになくなっていきました。
今では下駄の履き方を知らない方も増えていますからね。だから、うちでは履き方やその人に合った調整をさせていただいています。

ふつうの靴と下駄の大きな違いは、左右の違いがないのでローテーションで履けることですね。履き方は、鼻緒がきついものを選んで、それを指先で挟むように履くことが大切です。指の奥まで入れないんですね。鼻緒がゆるいと歩いているうちに下駄が動いてしまいますし、鼻緒ずれの原因にもなってしまいます。鼻緒のきつい下駄を徐々に慣らしていくと、履けば履くほど足に馴染んでくるんですよ。
他にもサイズはふつうの靴の感覚とは違っていて、かかとや小指がはみ出すぐらいがちょうどいいサイズです。足にすっと入る下駄がサイズ的に合っていると思われがちですが、入りにくいぐらいがジャストフィットなんですよ。大きめの下駄は、履いているうちにゆるくなりすぎて歩きづらくなってしまいます。
みなさん、脱げそうな気がするのか鼻緒を指間の奥まで入れがちなんですが、かかとを3センチぐらい出して、鼻緒を奥まで入れずに履くのが、下駄や草履の正しい履き方です。

こういうことを知っている人も少ないので、ちょっと履いてきつかったら棚に戻してしまうわけです。なので、横にいて説明させていただくことが大切だと思っています。
単純な造りの履物ですが、実は奥が深いんです。
日常的な履物だった下駄を、現代でもみなさんに普段から履いてほしいと思いますね。もっともっと日田下駄を盛り上げていきたいと思っています。

〜遊びごころたっぷりの下駄屋さん〜

昔ながらの下駄から現代の生活にも溶け込む、様々なデザインが人気の「本野はきもの工業」の下駄。
ネイリストさんとのコラボで誕生した「デコ下駄」はサイドに立体的な花がアートされ、浴衣にも映えます。そのほかにも「みゅーる下駄」「はいひーる下駄」などおしゃれなデザインの下駄や、布の絵柄を楽しめる色あざやかな「布あそび」など、ここにしかないこだわりの下駄があります。
日田下駄をもっと知ってもらおうと、新しい下駄の創作や活動に意欲的に取り組む「本野はきもの工業」で作られた、おしゃれでいつもとちょっぴり違う下駄をあなたの足で感じてみてはいかがでしょうか?
ジーンズにドレスに下駄。どんなコーディネートにもおしゃれが引き立ちますよ。

連絡先

本野はきもの工業
大分県日田市三芳小渕町1080-3        

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