ふるさとの水でつくる「おんたの郷米」
2020年03月31日
水郷日田でも有数の水源地、小野。ここに流れる透明度の高く澄んだ水を使って、地域全体で米作りをされている、農事組合法人「小野谷」の冷川さんに、組合での取り組みと米作りへの思いをお聞きしました。
組合の担い手は地元の一人一人
もともとこの辺りの米農家は4地域に分かれてたんですけど、田んぼを保存していくためにまとまろうということで、平成21年に組合が立ち上がりました。 小野の地域で仕事が定年になって時間のある人とか、僕みたいに自営業で時間に融通がきく人が組合に入り、お米作りをやっています。 最初は田んぼの持ち主さんの依頼を受け、お米の植えつけや刈り取りなど、委託されてその利用料を貰う形で経営していました。 でも徐々に「もう自分ではお米を作れない」という持ち主さんが増え、ほとんどの作業を請負うようになってきたんです。販売まで行うようになり、それだったら”自分たちの作りたいお米”を作って、名前を付けてブランド化しようということで、農事組合法人「小野谷」が作る「おんたの郷米」ができました。
恵まれた環境の中で育つお米
もともと小野の水はキレイで美味しいんです。 ここからちょっと登ったところに「ことといの里」という、夏は自然プールが楽しめる場所があります。そこで地下水が汲めるんですが、冷たくて美味しいと有名で、いろんな方が遠方からも汲みに来られます。地下水と同じく、川に流れる水も年中冷たく、透き通っています。 この川の水を使い、お米づくりを行っているんですが、水って冷たすぎても温かすぎても、稲に良くないんです。 田んぼに入れるとき、冷たい水を温める方法はあるんですけど、温かい水を冷たくする方法っていうのは、なかなかないんですね。ここでは、冷たく澄んだきれいな水が絶え間なく流れています。その水でお米を育てられるのは、本当に恵まれているなぁと感じます。
減農薬で作る自慢の特別栽培米
米を揉んでまく前に、一般的には農薬で消毒をするんですけど、組合では、60℃以上のお湯で殺菌消毒してます。もちろん、小野の水を温めたお湯です。 揉み種を60℃のお湯に10分ほどつけておくと、農薬を使うのと同等程度の効果があるんです。 この他にも、できるだけ農薬や肥料は使わないで済むよう工夫しています。 田んぼの肥料は、もともと有機肥料だけを使っていたんですが、れんげの花を足すことで有機肥料を通常の半分にしています。 れんげの種をまいて、花が咲いて、枯れる直前に土と一緒に耕すと、緑肥堆肥っていう天然の肥料になるんです。 お米の収穫が終わってすぐの10月〜11月ごろにれんげの種をまいて、芽が出るのが3月ごろ、そこからゴールデンウィーク辺りまで、田んぼ一面に広がるピンク色のれんげの花が楽しめます。花が咲いた後は、土にまぜこみ、肥料となります。 田植えが終わった夏ごろは、草刈りしたり、土用干しと言って、田んぼの水を抜いて土の中に空気を入れる作業をしています。 何もせず待つだけでもお米はでるんですが、草刈りをしていないと次々と虫がついて、稲に病害虫が来てしまいます。 土用干しすると、土の中に空気が入ることで稲の生育がよくなります。収穫時、土が十分に乾いてないと、刈り取り用の機械を入れた時に沈んで稲を倒してしまうということもあります。 手をかけて、可能な限り農薬を使わず、小野川のきれいな水で作るお米。それが「おんたの郷米」の売りですね。
予想外の事態に対処した2017年
一番記憶に残っているのは、2017年の水害です。 豪雨による洪水が起き、土砂崩れによって水路や道路まで流されてしまいました。水路はどうしても川のすぐそばにあるので、被害も大きかったんです。被害がない田んぼもあったのですが、水路が潰れてしまって水の確保ができない所もあり、復旧に苦労しました。 洪水で木や土砂が入り込んだ田んぼも多くあり、みんなで手作業で取り除いていきました。 病害虫とかは予測できるんですけど、あの水害は予想外でした。 復旧のため農作業に充分時間を充てることができず、その年は収穫も大部分ができませんでした。今では大部分が元に戻っていますが、まだ復旧工事が続いている場所もあります。
食べた人の「美味しい」が自信になる
どうしても「食べ慣れ」っていうのがあるのか、僕は、ず~っと子どもの頃から自分の家でできたお米を食べて育ったんです。「美味い不味い」じゃなくて「うちのとは違うな」って基準で判断してしまうんです。 他の人に食べてもらった時に「やっぱあんたんとこの米は美味しいばい!」って言ってもらえると、「やっぱり、ここの米は美味しい」って思えるんです。 オススメの食べ方は、シンプルにおにぎりですね。冷めても美味しく、お米の旨みをしっかりと感じられると思います。 僕もパンやラーメンなど麺類を食べることもあるんですが、みなさんにもっとお米を食べる機会を持って欲しいなぁ、と思っています。 ただ美味しいお米を作るだけじゃなくて、食べてもらう機会を増やしていきたいですね。 売り切れることもあって、毎年、新米を楽しみに待ってくれている人たちがいます。これからも美味しい「おんたの郷米」を届けていきたいという思いで米作りをしています。
〜恵まれた環境で丹精込めて作られる「おんたの郷米」〜
英彦山山系を源流とする小野川の水が流れ込む、とても恵まれた環境の中で育つ「おんたの郷米」。農事組合法人「小野谷」の方々によって、手間暇かけられできたこだわりのお米は、ツヤがあり、炊きあがりの白さと光沢に優れています。旨み、香りが自慢の「おんたの郷米」をみなさんもぜひ、味わってその違いを感じてみてください。
連絡先
農事組合法人 小野谷
大分県日田市大字小野2272番地