日田玖珠地域産業振興センター

杉の木目が美しく、履いて心地よい「坂本木履工業」の日田げた

日田げたを作りはじめて46年になる坂本さんご夫婦。日田げたの特徴でもある、軽さとやわらかな質感は足に心地よく、快適に歩けます。昔は日常的な履物だったげたは、履いているとどこかホッとしてきます。日田の伝統的特産品である日田げたへの思いや活動などについてお話しを伺いました。

日田げたを作りはじめて46年

うちは親父の代からで、昭和22年創業。今年で73年になりますが、その頃は日田げたが盛んな時期でした。日田げた全体では、年間2000万足ものげたを生産していました。その後、昭和28年の大水害で多くが廃業や製造が中断されてしましました。それに加えて靴の需要増加もあり、減少し続けて、今げたを作っている工房は数えるほどになってしまいました。日田げたの組合員はうちを含め、5件だけです。
私は、親父の跡を継ぎ、げたを作りはじめて46年になりますね。結婚と同時にげたを作りはじめました。今は夫婦で作業をしながら、従業員さんにも来てもらっています。
日田は全国のなかでも杉を育てるのに適している地域なんです。内陸盆地で、1年通しての寒暖差が激しく雨量も多い気候です。そのため、そこで育った日田杉は木目が美しく、強くしなやかなのが特徴なんです。日田げたはその日田杉のなかでも木目が詰まった根元部分を材料としていて、ひとつひとつ手作業で加工しています。焼きの加工や、塗りなどすべて手作業ですね。

ひとつひとつ丁寧に手作業で

日田げたは分業制をとり、産地形成をしています。工程により作業を分担しているのですが、うちは土台の型抜きを除き、その後の工程を一から行なっています。基本的にほぼ全部の工程を手作業で行なっています。
まずげたの土台を天然乾燥させます。げたの形に切り抜かれた杉の木を円形に積み上げ、2〜3ヶ月ほど乾燥させて水分を抜き、軽い仕上がりになるよう仕立てます。積み上げられたげた型の杉の木は、日田ならではの風景ですね。その後、土台の杉の木にペーパーをかけたり、焼いたり、重ね塗りの作業をしながら、土台作りをします。表面を焼くことで日田杉の天然の木目を最大限に生かす仕上がりになります。焼きや塗りをして土台ができたら裏にゴムをつけます。げたに合わせ一つずつ周りのゴムを切った後に、鼻緒をつけ完成ですね。
工程ごとの作業になるので、ひとつひとつに手がいりますね。パッとできるわけじゃないので大変です。

とにかく、いい品物を

いいものをと思っていつもげたをつくっています。親の元を継いでずっと作ってきましたが、どこよりも、良い品物をと思って、手を抜かずに作っています。
たくさんの人にげたを履いてもらいたい思いもあります。げたは健康にいいんです。外反母趾や扁平足の防止になり、土踏まずができて、足裏の健康にいいんですよ。
市内のいくつかのこども園でも、子供達が日田げたを履いています。裸足でげたを履いて、遊んだり走ったりすることで、足指の発達や土踏まずが形成され、足の発育にいいんですよ。足裏や足指は姿勢の悪さにも深く関係されていると言われています。
他にも組合で子供達への様々な活動をしています。出前授業をしたり、自由にげたに絵をかいてもらったり、学童でも夏休みに行って絵付け体験をしたりの活動をしています。
大人の方や海外の方向けにも、日田玖珠地域振興センターの1階で鼻緒付け体験もしています。最近は台湾の人たちが団体でしましたけど、日本文化を体感できて、自分の好きな鼻緒を選び、好みの柄のげたが作れるのでお土産や思い出にもなって、とても喜んでもらえます。また次の予定も入ってますよ。
色々と組合でしてきましたが、みんなお互い歳が言ってしまって、跡継ぎもいなかったりなど課題はありますね。
日田げたを多くの人に知ってもらい、伝統工芸を守っていきたいと思っています。代々続いてきた職人技術や日田げたの品質を守り続けていきたいですね。

〜「日田げた」で心も体も健康に〜

伝統的特産品の日田げたを作り続けている「坂本木履工業」のげたは履き心地もやわらかく、絶妙なカーブが足にフィットし気持ち良いです。
ご主人の作業する手元は職人技そのもの!長くげたを作り続けているからこそ成せる技があります。奥さんはそばで、沢山のげたの中から両足の木目が揃うよう選別していましたが、その早さに驚きました。
健康は足元からというように、みなさまも散歩やちょっとしたお出かけに、げたを履いて過してみませんか? ”いい品物を届けたい”という思いが詰まった「坂本木履工業」の日田げたを、生活の一部に取り入れてみてはいかがでしょうか。いつもの日常がちょっぴり素敵に過ごせますよ。

連絡先

坂本木履工業
大分県日田市亀山町1−6