日田玖珠地域産業振興センター

足になじむ室内履きの下駄が人気のうらつか工房

日田の下駄は分業制で製造されています。昭和20年代に創業した浦塚工房。最初は下駄の生地を専門に作る工房として創業しました。現在は完成品まで製造されるようになりましたが、その経緯や下駄作りへの思いについて、二代目の浦塚さんにお話を伺いました。

ものづくりへの思いから先代の後を継いで45年

-この場所でずっと続けられているんですか?

はい。親父の後を継いでぼくで二代目です。もう45年ほどになります。もともと日田の下駄は分業制なので、機械で生地(下駄の台)を作っていました。ただ、生地だけ作るのはおもしろくないから、自分で完成品まで作るようになったんです。だいたい30種類ぐらい作っているから、機械のセッティングもしょっちゅう切り替えるんですよ。

-形が違う下駄を30種類ですか?

そう。厚みや幅、サイズ、それに大人用や子ども用などいろいろです。だから、刃物も自分で作っています。機械を使い、木の角材を下駄の形にぐるっと切るわけです。型も全部自分で作ります。一つ一つ手作業で作るので、とても手間がかかります。

-お父さまがされていたから、ご自分も継ぎたいと思われたんですか?

最初継ぐ気は、全くありませんでした。本当は家具職人になりたかったんで、市内の家具メーカーに勤めていたんです。ところが、いつのまにか営業に回されましてね。でも、営業をやっていろいろな会社を見ていくうちに、「自分でやった方がいい」と思うようになったんです。そもそも営業はおもしろくなかったですし、ものづくりがやりたかったんですよ。楽しいと思いましたし、自分に合っているなと思いました。それで、継ぐことにしました。
以前はここにも従業員がたくさんいたんですけど、下駄の数がそもそも出なくなったこともあって、今は家族で下駄作りをしています。ぼくも年だし、従業員がいれば仕事の時間帯も従業員に合わせないといけないですから。自分でやれば自分のペースでできるので、今は家内と二人で、あと娘夫婦がこの半年ぐらい東京から来ています。そのうち後継者になってくれるかもしれません。

-継いでくださるとうれしいでしょう。でも、すぐにできるものではないですよね?

そう、弟子入りしないと無理です。5年、せめて3年ぐらいきちんとやらなきゃいけませんね。

足になじむ日田杉の室内履き下駄

今、おもに作っているのが日田杉で作った室内履きの下駄ですね。杉を薄くスライスして5枚重ねているんですよ。同じ方向だと割れちゃうから、繊維の方向を縦横と変えて重ねるんです。底には、牛革を張っています。フェルトでも良いんですが、フローリングで滑りやすいんです。牛革には、滑り止めと吸音の効果があるんですよ。
この下駄は、かなりの時間がかかり今の形に出来上がりました。製作にも手間がかかります。杉の研磨が大変なんです。自分のところで杉板も作っているんですが、角が立っているから研磨して丸くします。でも、あまり研磨しすぎると形が崩れてしまうから難しいんです。この作業は特に気を使います。

下駄の楽しみ方

夏場にふだんから履いてほしいですね。無塗装の下駄は汗を吸い取るんですよ。ですから、気持ちがいいし、足になじんで履きやすいんです。ベルトタイプもありますが、鼻緒タイプの方がすり足になるからしっかり歩けます。ただ、これは個人用ですね。足の油が付いてしまうし、無塗装だから消毒もできないので、旅館のようなところでの使い回しには向いていません。
そして、下駄はすごく足の健康に良いんですよ。歩く時に足の指で地面をぐっと掴むから、土踏まずのアーチがしっかりできる。そうすると、足にバネがついて膝に負担がかからないし、腰にも負担がかからなくなります。外反母趾の予防にもなりますよ。それと、個人的には塗装してない下駄がいいですね。塗装すると木を殺してしまう。汗を吸わないし、木のぬくもりも感じられなくなってしまいます。木は1年中同じ温度を保つので、無塗装だと夏は涼しくて冬は暖かく感じるんですよ。

伝統も伝えながら、現代に合ったものづくり

-下駄を作る時は、「次はこうしてみよう」とか新しいことを取り入れながら、昔とは形を変えていくという感じでしょうか?

うちの敷地内に「与七郎の館」といって、下駄を展示する資料館を自分たちで作りました。父が下駄を作り始めた昭和初期のものなど、様々な下駄を展示しているのですが、生活様式の変化で下駄の需要が減ってきた今、現代に合わせたものに変えていかないといけません。もっとたくさんの人に履いてもらうためにもサンダルや室内履きなど今のライフスタイルに合った要素を取り入れ下駄作りをしています。そして、家にあって絵になるようなデザインにこだわっています。

〜素足にやさしいうらつかの室内用下駄〜

木の滑らかな質感が感じられるうらつか工房の下駄。中でも人気なのが、家の中で季節関係なく履けることが嬉しい室内用下駄です。素肌から木の温もりが感じられ、毎日履きたいと思わせてくれます。ぜひ、この温もりを素足で体感してみて下さい。

連絡先

うらつか工房
大分県日田市吹上町4-41        

H P http://www.uratsuka-kobo.com/shohin/index.html